2008年11月23日

経済成長の終焉−通貨システムでの対応

 Gail the actuary(ペンネーム)女史が投稿をしたとThe Oil Drum(ドラム缶)で紹介していた記事が短くて大事そうなので全文を仮訳しておきます。
An Overlooked Detail - Finite Resources Explain the Financial Crisis
見過ごされた細部−資源の有限性で金融危機を説明できる
http://www.theoildrum.com/node/4770

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 この世界は有限である

 私たちは皆、世界が平らではないことを知っている。平らな地球を主要な前提条件として使ったモデルを作ったなら誰でもそれを笑い飛ばすだろう。

 私たちはまた、世界は無限ではないことを知っている。地球とその大気中の原子の数は有限である。汚染物質を吸収する大気の能力もまた限られている。土壌が繰り返される不適切な使用に絶える能力は限られている。再生可能ではない資源の量は限られている。

 化石燃料、なかでも石油は特に問題である。資源量は膨大ではあるものの、われわれが容易に採掘できる石油、天然ガス、石炭を採掘し終わった後では採掘の費用(化石燃料資源と労働力、きれいな水にかかるもの)が大幅に増加している。
(エタノールや太陽電池などの)代替品は(化石燃料資源と労働力、きれいな水にかかるものは)高価である。そして化石燃料を代替するために必要な量をかき集めるのも難しい。

 有限な資源だが成長は果てしない

 有限な世界という明確な問題にも関わらず、金融コミュニティは、経済成長は善であり実際にいつも期待されているという信念を中心においている。その帰結として、レバレッジは善である。われわれの金融システムは債務と非常に密接につながっており、貸し出しが停止したなら、急ブレーキがかかるだろう。
 われわれの銀行と保険会社は貸し出しに頼っている。銀行は貸し出しを主な収入源としており、保険会社はバランスシートの資産側の多くを債権の形で保有している。

 一体どうやって、果てしのない成長が可能であるとわれわれは信じ込むようになったのだろう?一つには、単純に過去の延長ということによるのだろう。成長は産業革命から続いている。エネルギー資源との関連はその間ずっと続いてきた。産業革命は商品の生産を安価にするために石炭をつれてきて、その後石油、天然ガス、ウランが追加のエネルギー資源として加えられた。世界のエネルギー使用は実質的には中断することなく長期間にわたって増加し続けた。

 またもう一つには、エネルギーの寄与を無視し、そしてもちろん有限の世界にいるという事実を無視した経済モデルを通じて、私たちは 終わりのない成長という考えを正当化してきたことがあげられる。

 この種の経済モデルには、労働と資本の寄与を考慮したソロー/スワン成長モデルと、労働と資本、生産性を考慮したコブ/ダグラス生産関数が挙げられる。このモデルのどちらも有限性を考慮してはいない。

 エネルギー資源と経済成長のあいだのつながり

 ロバート・エアーズとベンジャミン・バールは2004年にエネルギー資源と経済成長のあいだに密接なつながりがあることを示した(英文pdf文書)。エネルギー消費の成長とエネルギー効率の向上の両者を盛り込んだ経済モデルを使ったとき、米国の1900年〜2000年までの主要な経済成長の大半を説明でき、1975年以降に12%程度の残差があるだけであることを発見した。(訳注:ディビッド・ストローン著の本「地球最後のオイルショック」にも詳しく出てきましたね。)

 単に常識に従っても、成長のために、そして単に経済が回り続けるためだけにもエネルギー資源が必要であることが分かる。
ディーゼルとガソリン、電力なしに私たちができる経済活動はほとんどない。
 常識に従えば、ソロー/スワン成長モデルとコブ/ダグラス生産関数のようなモデルは不完全なものだ。

 私たちは限界に到達している

 私たちが使っているどんな種類の資源についても、それらは私たちがより多く使うようになるにつれて、単に枯渇するのではない。むしろますますそれらは採掘するのが難しくなるのだ。鉱物資源の場合であれば、鉱物の濃度はますます低くなる。鉱山はますます深くなっていく。化石燃料はますます質が悪くなり、急速に採掘し難くなる。

 長いあいだ、減耗は実際の問題とはならなかった。資源は非常に多く、化石燃料のエネルギーから得られるレバレッジは非常に大きかったため、(石油、天然ガス、石炭、ウラン、銅、、リン、金、プラチナ、インジウム、ガリウム、淡水、その他数多く)ほとんど何でも望むものを必要な量だけ非常に安価に採掘することができてきた。

 最近数年間で起こったことは、これらの資源の多くがより採掘が難しくなる地点に到達し始めたということだ。2007年4月、ロイヤルダッチシェル社とフランスのトタル社のCEOは「簡単な石油」の日々は終わったと語ったと伝えられる。
ちょうど先週のこと、国際エネルギー機関(IEA)は「世界のエネルギーシステムは分岐点に差し掛かっている。現在のグローバルなエネルギー需給の傾向は、明らかに環境的にも経済的にも社会的にも持続可能ではない」という言葉で始まる報告書を公表した。

 現在の経済危機

 今や私たちは、化石燃料とすべての種類の鉱物が限界に到達しようとしている地点に来ているからには、もし経済が過熱し始めるなら多くの商品の価格は急上昇し始めることを知っている。
この一部は限られた資源をめぐる競争である。一部には限界に到達しているための資源の採掘コストの高騰がある。
食糧価格も同様な影響を受け、一部には機械のための石油と窒素肥料のための天然ガスが食糧生産のために使われており、一部には、エタノールのためのコーン生産との競合が価格を押し上げているためである。
 一端食糧と燃料価格が上昇すると、人々は負債を返すのが難しくなり、債務不履行が増える。いまや債務不履行は経済を通じて急上昇している。銀行は財務状況が悪いため、貸し渋りを始めている。信用の欠如によってより直接的、間接的な商品の買い手が(たとえば石油天然ガス、ウラン、銅など)多くの製品を購入することが難しくなっている。価格は比較的弾力性が低いため、広範な種類の製品の価格は急降下している。

 これらの商品価格の低下は、新たな商品生産にとって(正の)フィードバック効果をもたらす。
 エネルギー安全保障ジャーナルにまもなく掲載される予定の原稿において、私は信用危機とその結果としての商品価格低下が(化石燃料、再生可能エネルギー、ウランなど)すべての種類のエネルギー商品の計画生産の減少につながることを示した。
結果として、もし経済が再度過熱し始めれば、再度商品価格も次のラウンドの上昇を始めることになり、もちろん、これは次のラウンドの債務不履行につながる。

 解決策は何だろう?

 有限な世界にいる私たちは、自分自身が横ばいあるいは衰退する経済の中にいることにまもなく気が付くだろう。というのは単に、大きな価格スパイクと続いての債務不履行、次の信用収縮と商品価格崩壊、というサイクルを引き起こさないで成長を続けるための、容易に採掘可能な資源がないからである。

 私に分かる唯一の解決策とは、債務に基づいておらず、成長することを期待できない新しい通貨システムを作ることだろう。理論的には、それは資源が少なくなり経済が自然に縮小するにつれて減少するものであるだろう。

 横ばいあるいは衰退する経済では、長期債務はもはや意味を持たない。借り手が利子を添えて借金を返済できる可能性はかなり低くなる、なぜなら全体としての経済システムが成長せず、利子支払いのための余剰な利益を生むことをしないからだ。

 借り手が20年間の不動産ローンを支払うためには、彼が定期昇給と補助を得ているときの方が、彼の雇い主が企業のリストラと労働時間短縮をしているときよりもはるかに簡単である。

 どうにかこうにかして、商業取引のための非常に短い債務以外の債務なしで動くように通貨システムを改造することが必要である。さらに加えて、私たちは作り出してしまった債務の泥沼から抜け出す必要がある。
 今は存在する資源で賄えるよりもはるかに多くの債務と、社会保障と医療保障などでの果たすべき約束がある。

 新しい通貨システムに転換するに際して私が想像できる唯一の方法とは、新旧の通貨システムを併用する期間を経ることだ。
新通貨は、当初は食糧とエネルギー商品のための(ある種の配給システムのような何か)限定的に供給されるものであるだろう。人々はそれぞれの通貨システムでいくらか支払いを受けるだろう。結果として新しい通貨システムは、現在の問題が深刻なシステムに取って代わるのだろう。
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イベント案内12/6「どうなる?「お金」崩壊」

講演会の案内です。

●12月6日の「お金崩壊」関係研究会
 以下宣伝文

 昨年末のサブプライムローン問題の勃発以来、グローバルな金融資本主義は、激しく揺さぶられています。この1年間の世界経済の動向をおさらいし、行方を考えていくためにゲゼル研究会のメンバーに話題提供をしていただき、その後、皆さんと一緒に議論したいと思っています。 年末が迫る忙しい時期かと思いますが、お時間が許しましたら、是非、ご参加下さい。

■日 時  
12月6日(土)14:00〜17:30(開場13:45)
■会 場 
専修大学神田キャンパス・2号館4階 ゼミ室44教室
千代田区神田神保町3-8
地下鉄九段下駅 出口5より徒歩3分、
神保町駅出口A2より徒歩3分、
JR水道橋駅西口より徒歩7分
地図 http://www.senshu-u.ac.jp/koho/campus/index06a.html
構内 http://www.senshu-u.ac.jp/koho/campus/index06b.html

■講 演 
森野榮一さん「金融経済化と出口なき世界」  (60分)
青木秀和さん「『お金』崩壊に向かう世界経済」 (60分)

■参加費  資料代として500円
■主 催  ゲゼル研究会( http://www.grsj.org/
■問合せ  泉留維まで
メール rui.izumi at gmail.com (at = @ に変換)
※どなたでもご参加いただけます。
小規模な部屋で開催を予定していますので、参加される方はメールでご一報いただけると助かります。なお、講演会終了後の懇親会に参加される方は、できるかぎり事前にメールでご連絡ください。


【略歴】
青木 秀和
財政アナリスト。大卒後3年間準大手ゼネコンに勤務。その後、公務労働者に転じ、社会福祉・公共事業・環境保全部門を経験。現在、公立大学事務局勤務。財政窮迫の様相とその根源的原因をライフワークとして追究。今年『「お金」崩壊』(集英社新書)を出版。

森野 榮一
経済評論家、ゲゼル研究会代表。WAT清算システム会員。著書、論文は『消費税完璧マニュアル』『商店・小売店のための消費税対策』(ぱる出版)、『エンデの遺言』、『エンデの警鐘』(共著、NHK出版)、『なるほど地域通貨ナビ』 (編著、北斗出版) など多数。1999年、NHK BS1特集「エンデの遺言」の番組制作に参加・監修。その後、町づくりのアドバイスや地域通貨の普及活動に努めている。

エコロジー/エントロピー経済ゼミMLより

本「「お金」崩壊」 (集英社新書 437A)
http://www.amazon.co.jp/%E3%80%8C%E3%81%8A%E9%87%91%E3%80%8D%E5%B4%A9%E5%A3%8A-%E9%9B%86%E8%8B%B1%E7%A4%BE%E6%96%B0%E6%9B%B8-437A/dp/4087204375/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1224461990&sr=8-1
 この本の後半の方にピークオイルの話が出てきます。
自然資本の循環と、社会経済におけるお金の循環の相互関係についての体系的な議論を目指したものという気がします。
多分これから何度も何度も読み直すことになる本でしょう。続きを読む
posted by おぐおぐ at 05:50 | TrackBack(0) | イベント案内 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月14日

IEAの公式発表では…

「IEAによる年率9%の石油減耗評価の意味」
http://sgw2.seesaa.net/article/127917473.html
の続きです。


11月12日にHPに掲載された、国際エネルギー機関(IEA)のWEO2008のエグゼクティブサマリーは、日本語版も出ていますね。

http://www.worldenergyoutlook.org/docs/weo2008/WEO2008_es_japanese.pdf

日本人の田中事務局長のお陰でしょうか。

 そのままご覧ください、というと不親切でしょうから長々と関連部分をピックアップしてみます。

”2008年の価格急騰へと行き着いた近年の価格上昇は、短期的な価格ボラティリティの大幅な高まりと相まって、価格が短期的な市場の不均衡にいかに敏感に反応するかを浮き彫りにした。また、石油(及び天然ガス)資源が究極的には有限であるということへの人々の注意も喚起した。”
(コメント:確かにピークオイル不安のことを指摘しているここの記述は良いですね。でも、石炭についての記述も同じであるべきですが)

”実際には、供給面での差し迫ったリスクはグローバル資源が不足するリスクではなく、必要な投資が不足するリスクである。上流部門での投資は名目ベースでは急増しているが、増加の大部分はコストの上昇と生産減退率の上昇−特にOPEC以外のより高コストの地域における−に対処する必要によるものである。
現在、最も安価な資源への国際石油メジャーのアクセスが制限されていることなどにより、大半の資金はコストの高い埋蔵資源の探索と開発に向かっている。世界の大半の地域における資源の減少とあらゆる地域における生産減退率の加速に直面する中、最もコストの安い国々での生産を拡大することが、合理的なコストで世界の需要を満たしていく上で極めて重要となる。”

 ”世界の石油生産量が予測どおりに増加するかどうかは、十分な投資がタイムリーに行われるかどうかにかかわっている。日量約6400万バレルの追加的な総生産能力−サウジアラビアの今日の生産能力の約6倍−が2007〜2030年に操業を開始する必要がある。新規能力のうち日量約3000万バレルは2015年までに操業開始の必要がある。この期間に投資不足により石油供給がひっ迫する現実的なリスクは解消されていない。”
(コメント:ということでやはりOPECにあるはずの公表埋蔵量をいかに吐き出させるかが問題なのだ、という問題意識です。ほーんとにあるのかえ?という疑問をクリアする根拠があるわけではないようです。)


”しかし、油田ごとの石油生産量の減退が加速している

 世界には十分過ぎるほどの石油資源が眠っているが、その資源がレファレンス・シナリオで予測されている需要水準を満たせるほど迅速に開発される保証はない。最大の不透明材料のひとつは、既存の油田の生産量が成熟に伴いどのくらいのペースで減少していくかである。これは、予測される需要を満たすために世界的に必要とされる新規能力と投資を決める上で、極めて重要な要因である。
 WEO2008のパートBで述べられている、800油田の過去の生産トレンドを油田ごとに詳細に分析した結果によれば、観察された減退率(観察可能な生産減少)は世界の全ての主要地域で長期的に加速する可能性が強い。これは、油田の平均規模の小型化と一部の地域における海底油田から見込まれる生産量のシェア拡大によるものである。我々の分析によれば、一般に、油田の埋蔵量が多ければ多いほど、埋蔵量に比したピークは低く、ピーク後の減退も緩やかである。また、減退率は海底(特に深海)油田より陸上油田の方が低い。投資政策や生産政策も減退率に影響する。
我々の推計によれば、生産のピークを過ぎている油田の場合、世界全体の観察された減退率(生産量加重ベース)は現在6.7%である。レファレンス・シナリオでは、この減退率は2030年に8.6%へと上昇する。現在の数字は、稼働中の54の超巨大油田(埋蔵量50億バレル超)の全てを含む800油田の生産分析から導き出したものである。このサンプルの場合、全稼働期間の生産量で加重した全油田平均のピーク後の観察された減退率は5.1%であった。減退率が最も低いのは大規模油田で、平均すると、超巨大油田は3.4%、巨大油田は6.5%、大油田は10.4%である。”
(コメント:既存の油田についての減退率が明示されるのは珍しいことで、特筆すべきことでしょう。)

”観察された減退率は地域により大きく異なる。
最も低いのは中東、最も高いのは北海である。これは主に油田の平均規模の差を反映したものであるが、平均規模は全体の埋蔵量がどの程度枯渇しているか、陸上油田か海底油田かといった点と関係している。推計による世界の減退率が我々のデータに基づく減退率より高いのは、小規模油田の相対的に高い減退率を調整した結果である。
自然減退率(基調となる減退率)は観察された減退率より平均で約3分の1高いが、この差は投資額の違いを反映して地域ごとに異なる(自然減退率は進行中および定期的な投資の影響を除いたもの)。推計では、ピーク後の油田の自然減退率は世界全体で9%である。言い換えれば、既存油田の生産減少ペースは、ピークを過ぎた後にこれらの油田に設備投資が全く行われていなかったとすれば、約3分の1速くなっていた、ということである。レファレンス・シナリオの予測は、全ての地域で油田の平均規模が小型化するとともに、大半の地域で予測期間にわたり海底油田への生産シフトが起きることから、世界の平均自然減退率が2030年までに年率で約10.5%(観察された減退率より約2%ポイント高い)へと上昇することを意味している。これは、この減退率の上昇を相殺するという目的だけのためにも、一部の国では上流部門への総投資額を増加させる必要があり、しかも場合によっては大幅な増加が必要となる、ということである。この影響は広範囲に及ぶ。予測される自然減退率の加速を相殺するだけのためにも、日量100万バレルの追加能力――現在のアルジェリアの総能力に匹敵する量――への投資が予測期間末まで毎年必要になる。”
(コメント:ということで石油メジャーの手の届くところにはないOPECの埋蔵量頼みである、というところまでを明らかにするのがIEAの限界である、という立場のようでした。仮にOPECの公表埋蔵量が水増しであったことが後日分かったとして、投入した投資がむだになることにはIEAは責任を負わない、ということになります。)

”上流部門への投資障壁が世界の石油供給量を制約する可能性がある

 自然減退率が上昇するということは、既存油田(自然減を食い止めるため)でも新規油田(既存油田の生産減少を相殺するためと需要の増加に応えるため)でも上流部門への投資を増やす必要がある、ということである。実際、上流部門への総投資額(石油・ガス田)は近年急増しており、2000〜2007年に名目で3,900億ドルへと3倍超に増えている。この増加の大半は単位コストの上昇に応えるためであった。コストの上昇について調整すると、2007年の投資額は2000年に比べ70%の増加である。IEA上流投資コスト指数によれば、世界全体の上流コストは推計で2000〜2007年に平均90%上昇し、2008年前半にさらに5%上昇した。この上昇の大半は2004〜2007年に生じている。
WEO2008のために調査した世界の上位50社(世界の石油・ガス生産量の4分の3超を占める)の計画に基づくと、世界の石油・ガス向け上流総投資額は今後も増加し、2012年までには名目で6,000億ドルを超える。これは2007年に比べ50%超の増加である。想定どおりにコストが横ばいになれば、2012年までの5年間の実質投資額は年率9%増となる。これはその前の7年間とほぼ同じである。
 レファレンス・シナリオの予測は、石油・ガスの上流部門では2007〜2030年に累計で約8兆4,000億ドル(2007年ドルベース)、年平均で3,500億ドルの投資が必要になる、ということを意味する。これは現在の投資額を大幅に下回るが、投資が必要とされる地域が大きく変わるためである。投資額を大幅に増やす必要があるのは、豊かな資源を抱えている地域で単位コストが最も低い地域、特に中東向けである。要するに、資源基盤が縮小するにつれ、国際企業が非OPEC地域に投資する機会は減り、世界の石油・ガス残存埋蔵量を大量に抱える国々が、国有企業を通じて直接的に行うにしろ、外国投資家とのパートナーシップを通じて間接的に行うにしろ、より大きな投資負担を負わざるを得なくなる、ということである。これらの国々に、この投資を自ら行う、あるいは必要な投資ペースを保つために十分な額の外国資本を誘致するという意欲が当然にあるとは考えられない。”
(コメント:さて、蜜のあふれるカナンの土地があるのだ、そこではたいした額の投資も必要なく掘れば石油は出てくるのだが、OPEC諸国が政治的な思惑で投資をしようとしないので、国際石油メジャーはその外側の非OPEC各地の高価な開発をしながらも疲れているのだ、という結論です。なにやらオドシ・スカシ戦術に訴えたい、というきな臭い臭いすら感じますが、この後は国際オイルメジャーにOPEC諸国内で経営協力をさせてくれ、と続いています。)

全体の感想:
 一番上のグラフは、世界エネルギーアウトルック2008のHPの中にあるプレゼン用グラフ
http://www.worldenergyoutlook.org/key_graphs_08/WEO_2008_Key_Graphs.pdf
の内の一枚です。

 青い部分、既存の油田からの原油生産量の予測部分には、減耗率(9%なのか6.7%なのかは判別できませんが)の数字が刻み込まれていて、急な下り坂を示しています。投資の一部は、このカーブを緩やかにするためだけに使われており、観測された減耗率の状態の前提条件となっています。
 このグラフが従来公表のグラフと異なるのは、赤い部分のyet to be foundつまりこれから発見できるかどうか分からないものの規模を、yet to be developedとは区分けして明示しているところです。この赤い領域の石油が仮に発見量ゼロであれば、OPECの公表埋蔵量が正しくとも、2015年頃がピークオイルの年であることになります。そして仮にOPECの公表埋蔵量が水増しでyet to be developedが実際には残っていなければ(早期ピーク論)、あるいは仮に巨額の開発投資が適切に行われなければ(政治的ピーク論)いずれにしても今年が地球最後のピークの年であった、ということになるわけですね。

 早期ピーク論が正しいのか、政治的ピーク論が正しいのか、を考えるにあたっては、
 OPEC諸国は今年前半の原油高騰時に、なぜ石油開発に儲けを再投資しなかったのでしょう?
 脱石油の次の経済は金融セクターだといい、大規模な不動産投資をしていたり、国家投資会社を作って再びアメリカなどに投資資金を還流させていたのはなぜでしょう?
 との疑問への答えとして、OPEC内には有望な投資先がないからだという結論になるでしょう。

 さあーて、この2つのいずれであったとしても、世界金融危機の今年以降しばらくは巨額な開発投資が不可能になるでしょうから、結論としては今年が地球最後のピークの年であったということをIEAのこの報告書は保証してくれているものでしょう。続きを読む
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2008年11月12日

イベント案内:11/26もったいない学会『低エネルギー社会を作ろう』

 以下にpdf文書を転載しておきます。
http://www.mottainaisociety.org/dom_projects/pdf/sympo1126brief-4.pdf
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第5回シンポジウム
石油ピークを啓蒙し脱浪費社会をめざす もったいない学会
『低エネルギー社会を作ろう』

・日時 2008年11月26日(水) 10:00〜17:00
・場所:東京大学山上会館大会議室(http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_00_02_j.html
・主催:もったいない学会、日本工学アカデミー科学技術戦略フォーラム
・協賛(予定):且ミ会インフラ研究センター、他
・後援(予定):先端技術産業戦略推進機構、日本工学アカデミー環境エネルギー研究会、環境・エネルギー・農林業ネットワーク、日本工学会、毎日新聞、自動車技術会、省エネルギーセンター、他
・参加費:会員2000円、学生会員1000円、非会員3000円(当日会員申込み(年会費1000円)可能)
【事前参加申し込み】
題名を「11.26シンポジウム参加」とし、「お名前」「所属」「会員or非会員」を明記の上、 guestアットマークmottainaisociety.org へ メールをお送りください。
開催主旨
原油や食料を含むあらゆる品物の価格が高騰している。さらに世界の金融不安も増大している。これは全て石油の有限性に由来するものであり、迅速な低エネルギー社会の構築が必要である。実際にこのための活動が各地域で芽生えている。このような活動を連携して強化するきっかけをこのシンポジウムで作りたい。「科学的な判断」と、日本古来の「もったいない」をキーワードとして。
シンポジウムの構成
低エネルギー社会の構築を目指す活動は世界各地で広がりつつある。これらの活動から、いくつかの事例紹介をいただき、この内容に関して先ず意見交換をして現状の理解を深める。次いで、現在の物価高、経済不況の根源と石油供給不足問題について解析する。また、エネルギー不足のもっとも深刻な影響が農業に表れることを示す。農業、食糧を始めとして今後拡大する多くの課題に対応するための基本的考え方について一つの考え方を示す。また、石油を初めとするエネルギー長期展望についても紹介する。以上の事例や現状の解析、今後の対応に関する考え方に基づき、この問題に関心を持つ方々の活動を連携し強化する可能性について意見を交換する。
開催趣旨の説明:大久保泰邦(もったいない学会監事、産業技術総合研究所)
招待講演
講演1 スウェーデンの脱石油政策--Ms Lena Lindahl(持続可能なスウェーデン協会・日本代表)
講演2 省エネ新エネ活動の例2(Transition Town)---榎本英剛(トランジション・ジャパン)
講演3 省エネ新エネ活動の例3(岩手県の事例)----両角和夫(東北大学大学院農学研究科教授、NPOいわて銀河系環境ネットワーク会長)
各団体の活動について ----(各団体)
基調講演 石油ピークが来た−世界恐慌の根源を解析する
---石井吉徳(もったいない学会長、東京大学名誉教授)
基礎講演1 エネルギー不足が引き起こす日本の食料への深刻な影響
--Antony F.F. Boys(東北大学大学院、農学研究科、非常勤講師)
基礎講演2 エネルギー不足対応の基本と可能性----大久保泰邦(もったいない学会監事、産総研)
招待講演 Three Hard Truths ---新美春之(昭和シェル石油会長)
総合討議:今後の連携について----全員(参加者からの質問表に従い、講演者とフロアで議論を行う)
−−−続きを読む
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2008年11月07日

今は世界金融危機なのか、世界石油危機なのか?

 主流派のマスコミの論調では「世界金融危機」と「石油高騰」、「経済悪化」の間の関係がいまいちはっきりしません。
 石油高騰は今年前半にはあれほど危機視されていましたが、それが7月に石油バブルが崩壊してよかったよかった、とはならずに、いきなり世界金融危機に突入して、まるで石油「バブル崩壊?」の好影響が分かりません。
 一方で金融危機の元、確かにサブプライムローン問題は2007年前から危機視されていましたが、どれだけ実体経済への悪影響になっていたのでしょう。また、その中での石油高騰の影響はどのくらいあったのでしょう?
 GMを初めとするビッグ3の合併話やトヨタの減益は「石油危機」か「金融危機」かどちらが原因なんでしょう?

(もちろんピークオイル論者である僕としては、「さまざまな型の生産量ピーク?」http://sgw2.seesaa.net/article/127917471.htmlというような解説をしようとしているわけではありますが。)
 ・・・といった話の整理のために一本紹介しておきます。

 The Oil Drum「ドラム缶」では、CIBCのエコノミストのジェフ・ルービンによる、7月までの原油価格暴騰が不況の原因だという主張が紹介されています。
Jeff Rubin: Oil Prices Caused the Current Recession
http://www.theoildrum.com/node/4727

元の記事は、
What's the Real Cause of the Global Recession?
Jeff Rubin and Peter Buchanan
http://research.cibcwm.com/economic_public/download/soct08.pdf#page=4
です。

”図1(上の図)では、過去の5回のグローバルな不況のうちの4回は、石油価格の急上昇に続いて起こっていることを示している”
(2008年のドル換算にしていますので、過去2回の石油ショックは名目レートよりも強調されています。)

”By any benchmark the economic cost of the recent rise in oil prices is nothing short of staggering. A lot more staggering than the impact of plunging housing prices on housing starts and construction jobs, which has been the most obvious brake on economic growth from the housing market crash. And those energy costs, unlike the massive asset writedowns associated with the housing market crash, were borne largely by Main Street, not Wall Street, in both America and throughout the world.”

後日記:
Ecobrowserのブログより
The oil shock and recession of 2008: Part 1
http://www.econbrowser.com/archives/2008/12/the_oil_shock_a.html
The oil shock and recession of 2008: Part 2
http://www.econbrowser.com/archives/2009/01/the_oil_shock_a_1.html
では、経済学的な考察が行われています。(といってもよー分かりませんが)続きを読む
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IEAによる年率9%の石油減耗評価の意味

Post Carbon Instituteの研究員となっているリチャード・ハインバーグによるFT記事の紹介があります。

「9パーセント」
http://www.postcarbon.org/nine_percent
−−−
 フィナンシャルタイムズ紙は長らく待たれていた、IEA(国際エネルギー機関)による400の大規模油田の減耗率評価の研究結果をリーク報道した。それによると「生産増加のための特別な投資がなければ、自然な産出量の減耗率は年当たり9.1%となる」という。驚くべき数字だ。この数字は、単に既存油田からの減耗を補って生産量を安定化させるためだけに、日産682万5千バレルが必要となることを意味している。つまり18ヶ月ごとに新たなサウジアラビアが必要となるのだ。
−−−
 以下省略。
 IEAの公式見解では、いまだに投資により、しばらくは生産量増加することが可能だとしているが、石油需要激減と価格暴落が続く今日、追加投資は見込めず、2008年7月がピークの月であったことは、どうやら間違いない、ピークオイルは歴史になった、過ぎ去ったとしています。

 さて、IEAとはそもそも、第二次石油ショックの後、OPECのカルテルの権力に対抗するべく、西側先進石油消費国が設立したエネルギー問題についての国際機関です。IEAの権威を日本政府は無視できないでしょう。

 9%とか、投資が十分に行われた場合の6%台の減耗率の数字は非常に高いです。
2年ほど前にリチャードハインバーグが本「石油減耗議定書」を提案していた時期には、2.5%程度の減耗率を想定していました。そのような国際合意に至ることすら不可能と思っていた人もいるわけですので、およそ国際協調が成立するレベルではありません。
 結果としては、石油価格のボラティリティが大きくなる、つまり需要が減少する中でも価格高騰と急激な低下が今後続くということが想定されます。7月をピークとする石油価格の乱高下と同様な状況が、今後原油生産量の下り坂の最中でも起こりうるということですね。


「IEAの公式発表では…」
http://sgw2.seesaa.net/article/127917477.html
もご覧ください。
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2008年11月02日

共同通信「海外トップニュース」よりその2

 地方紙に掲載されている原油高騰や食料危機関連の記事を紹介しましょう、ということで、共同通信の「海外トップニュース」より転載をしておきます。

10月31日
朝鮮日報(韓国)通貨危機の可能性去り株価急伸、ウォン回復
フィガロ(フランス)仏大統領、銀行の貸し渋りに警告
フランクフルター・アルゲマイネ(ドイツ)米7-9月期実質GDPは0.3%減

 30日
朝鮮日報(韓国)韓国と米国、通貨交換協定を締結へ
バンコク・ポスト(タイ)タイ政府、景気対策のため財政赤字拡大を容認
ワシントン・ポスト(米国)米当局、住宅ローン借り手救済策で合意間近
ニューヨーク・タイムズ(米国)FRB、0.5%利下げを決定
フィガロ(フランス)米が利下げ、パリ株式市場は高騰
フランクフルター・アルゲマイネ(ドイツ)前日に急騰のVW株、一転して大幅安に
コメルサント(ロシア)ロで個人のクレジット未返済に刑事罰導入検討

 29日
ワシントン・ポスト(米国)米利下げへの期待感でNY株急反発
ニューヨーク・タイムズ(米国)次はクレジットカード危機到来か
フィガロ(フランス)仏政府、新たに10万人に雇用助成
フランクフルター・アルゲマイネ(ドイツ)VW株急騰、株価指数を大きく底上げ

 28日
バンコク・ポスト(タイ)世界的な景気後退懸念でタイ株式市場急落
タイムズ(英国)税収低迷、政府の財政赤字急増の見通し
コメルサント(ロシア)ロ政府、経済対策で企業の株式購入も

 27日
朝鮮日報(韓国)政策金利、追加引き下げへ
タイムズ(英国)英中銀に早期の利下げ圧力
フィガロ(フランス)中国、金融サミットへの参加表明
フランクフルター・アルゲマイネ(ドイツ)独2州立銀行、新たに政府救済申請へ
コメルサント(ロシア)ロ企業、保険で優先される個人口座へ移し変え

 26日
人民日報(中国)アジア欧州首脳会議が閉幕
ニューヨーク・タイムズ(米国)消費低迷、流通など解雇急増

 25日
人民日報(中国)ASEM首脳会議、北京で開催
朝鮮日報(韓国)総合株価指数が10%以上暴落
バンコク・ポスト(タイ)ASEANプラス3が通貨交換協定強化で合意
ワシントン・ポスト(米国)米政府、保険会社にも公的資金投入へ
ニューヨーク・タイムズ(米国)先行き不安から通貨下落し株価も急落
タイムズ(英国)英経済、景気後退期入り
フィガロ(フランス)景気後退の兆候増す、世界の株式市場下落
コメルサント(ロシア)ロシアで株価暴落、財政破たん前の97年に近似
アルアハラム(エジプト)ASEAN首脳が金融危機克服に向けた改革表明

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