2006年05月09日

国家エネルギー戦略本文・現状分析編を読む

この5月にも正式決定しようとしている、国家エネルギー戦略の本文での分析について少しずつですが、詳しくみていきましょう。簡単な紹介はこちらへどうぞ。

1.現状に対する基本認識
(1) エネルギー需給の構造変化 について

構造的要因により需給がタイトになっている、という分析は、表面的な、木を見て森を見ていないものだといえます。
ここの論理の各論はそれぞれ、石油ピーク論のパズルにかっちり当てはまるピースなので、もし石油ピーク論について評価して妥当だと認識していれば、結論は以下のように変わっているべきものです。
(後日記:かっちり当てはまるピースといえるかどうか、についてはちょっと疑問になっています。政府が考えているのはスループットの限界についてだけなのでしょう。(石油価格に影響を及ぼす要因の分類)の追記部をご覧ください。

「現在の高水準の原油価格は、国際エネルギー市場の構造的な需給逼迫状況を踏まえると、中長期的に継続する可能性が高い。」
    ↓
「現在の高水準の原油価格は、国際エネルギー市場の構造的な需給逼迫状況および石油ピーク論を踏まえると、短期的には更に継続的に上昇し続け天井が見えない可能性がある。★仮説ではあってもハードランディングに備えてシートベルトを締めよ。★」

このメッセージがどうして出てこなかったのかについては情報公開を求めたいものです。


A 供給側の構造変化 について「供給側においては、…石油ピーク論に代表される長期的な資源制約に対する意識の高まりなどが顕在化している。」
ここではいわばアリバイ作りとして、主観的な意識の問題として石油ピーク論をさらっと流しており、具体的に妥当性を検証した形跡はありません。

「加えてこれまで維持若しくは増加してきた石油の生産量が、楽観的に見ても2030年代に、場合によっては更に早い時期にピークを迎えるのではないかといった石油ピーク論なども指摘されている。」

少なくとも次の、B 国際的な枠組みを巡る議論の動向 の段落の中で一項目を新たに起こして、)石油ピーク論の分析 として分析するぐらいのことはすべきでした。


C 国内的な環境変化 について

「我が国の購買力が、将来、国際エネルギー市場において相対的に低下していくことに伴うエネルギー資源の確保力の低下に対する懸念」
という段落があるのですが、ここも、各段落の中身も最初は全く理解不能でした。

へえー、その資源に依存する度合いが高ければ高いほど確保「力」がある、とか国際的な輸入量のシェアが高いほど購買「力」がある、と、日本の官僚ってこういう頭なんですか。

国際的な輸入量のシェアが高ければ高いほどあるのは、せいぜい価格交渉「権」なのであって、購買力というようなものではないでしょうに。
石炭の国際価格は、日本と豪州の取り決めが価格を決めていると言われています。ニュースを知りませんがおそらく天然ガスもシェアが高い時代はかつて、その状況にあったのでしょう。
でも、他の石油・ガスの価格高騰が波及して、本来豊富に資源が残っている石炭の交渉価格も2倍ほど高騰していたはずです。購買力というのはどこにあるんでしょうか。

 真っ赤に添削するか全文書き直し、を求めるべきでしょう。


(3) 各国で進むエネルギー戦略の再構築 について

ここにこそ、過去1年程度に欧米で広がっている石油ピーク論の紹介を入れるべきでしょう、インテリジェンスが足りない戦略本部というそしりを受けたくないのでしたら。

 …うーん、本当にインテリジェンスが足りないだけ、なのかもしれないですね、分からなくなってきました。本当に石油ピーク論の分析を含めていない理由の情報公開を求めるべきと思います。


後日記:
●石油業界団体の反応4月19日
エネルギーにおける石油の位置付けについて(石油連盟)
・これまで長期エネルギー需給見通しにおける石油依存度は、実績値が目標値を上回ってきた
・実現可能性を踏まえ、明確な需給見通しを策定すべき
・運輸部門における石油代替エネルギーの導入は、「供給安定性」「環境特性」「経済性」の“3E”の観点による実現可能性を踏まえ、目標を立てるべき
・IEA World Energy Outlook 2004では、2030年時点の輸送用エネルギーの石油依存度を95%と予測


とまあ業界団体としては痛烈な発言をしています。

さらに、「エネルギー高度化利用促進法」の制定に向けて(石油連盟) の中では、石油ショック後に作られた石油火力発電の新設禁止規定の見直しなどを行い、どんどん消費を拡大していこう、と経産省と比べてもスケールの違う時代錯誤の提言をしています。

●天然ガス業界団体の反応
平成18年4月12日
日本ガス協会 安西会長 記者会見発言要旨
・特に、「エネルギー政策課題への取り組み」については、現在、「新・国家エネルギー戦略」の策定や「エネルギー基本計画」の見直しに関して議論が行われており、いずれも昨今の国際エネルギー市場における構造変化を受けて、エネルギー安全保障に軸足を置いた政策が構築されるものと認識している。

・中・長期的には、アジア・太平洋地域のLNGの需給が逼迫する可能性は低いと考えられる。

…このあたりは認識不足ではないでしょうか。


●コメント
日ガス協会安西会長の発言は明らかに楽観的というか、認識不足と考えられます。

ガスは余っている時代から足りない時代に入ったというのがLNG Businessの最前線に立つ商社マンの発言です。

スポットで耳を疑うような価格でLNGが最近日本に輸入されているということです。
Posted by 魚讃人 at 2006-05-13 02:09:16

●魚讃人さん、どうもです。ガスといえば、サハリンからパイプラインを引いて天然ガスを持ってくるという話、ずいぶん以前から国会でも議員連盟もできて、期待があったはずですが、もうぽしゃってしまっているんでしょうか。
今からなら、DMEの製造工場をサハリンに建ててタンカー輸送、といった形を狙っているのかもしれませんが。
Posted by SGW at 2006-05-14 00:12:00

●コメントby SGW  2006-05-30 06:06:36
経済産業省のホームページに5月29日付けで、
「石油政策小委員会報告書」の公表について
http://www.meti.go.jp/press/20060529006/20060529006.html
というのが出ています。これがパブコメも受け付けて確定してから、標記の新・国家エネルギー戦略が確定するという順番になっているようです。

●コメントby SGW  2006-05-31 01:46:15
同じく、そのパブコメ募集が出ています。
総合資源エネルギー調査会石油分科会
石油政策小委員会報告書(案)
平成18年5月
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1030&btnDownload=yes&hdnSeqno=0000010819

に対してのパブリックコメントの案内が出ています。一ヶ月間の間に、あなたもピークオイル問題での対応を求めるコメントを出しませんか。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=620206005&OBJCD=&GROUP=

●コメントby SGW  2006-06-08 08:54:34
最新のエネルギー白書(国会提出版)
http://www.meti.go.jp/press/20060606004/hakusho-hontai-set.pdf
が資源エネルギー庁のホームページで報道発表されました。本屋さんに並ぶのはいつか知りませんが、オンラインでの登録は早いですね。

●コメントby SGW  2006-07-17 09:20:14
飯田哲也氏がISEP通信のコラム「風発」の中で「新・国家エネルギー戦略」についてクソミソに書いています。わはは痛快痛快。
http://blog.mag2.com/m/log/0000114817/107448716.html
posted by おぐおぐ at 07:13 | TrackBack(0) | 哲学(時代認識/エネルギー論) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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