2006年07月17日

米国の天然ガスピークの経験(再掲)

米国で昨年2月に発表された(はずが公表は遅れたという)ハーシュレポートをざっと読んでいると、米国内の天然ガスの枯渇話とそこから得られる教訓lessons learnedの話が出てきていました。(トップページ左下の、「リンク集:海外のページ編」にリンクしてあります。)

後日記:ハーシュレポートにおける米国の天然ガス減耗の経験を、第5章
V. LEARNING FROM THE NATURAL GAS EXPERIENCE
よりまとめておきます。

”北米大陸での潤沢な天然ガス資源という過去の予測は誤っており、現在米国は天然ガスの供給不安と価格高騰に悩まされている。供給不安は少なくとも今後10年は続きそうだ。”
”ここから得られる教訓は来る世界のピークオイル問題に役立つだろう。”

”天然ガスは過去10年間、事実上唯一の新設発電所の燃料として選定されてきた。”
”99年時点でも天然ガス供給の見通しを全ての調査会社が誤っていた。全米48州の天然ガス生産はピークを越えて減少し始めており、隣国カナダからの供給拡大もこれを補うに至っていない。カナダのアルバータ州の生産量も2001年にピークを打っている。”

”LNGによる救出にも遅れ”
新たなLNGの受け入れ港建設がテロ攻撃の恐れから、なかなか地元に受け入れられない問題となっている。逆に閉鎖を迫られてもいる。洋上受け入れ港の建設もありうる。

の状態から得られる教訓として、以下のものを掲げています。
−−−
・石油の埋蔵量推測と同様に、天然ガス埋蔵量の推測も不確実性が大きい。北米の天然ガス埋蔵量の推測は、大きく楽天的過ぎたこと、そして北米の天然ガス生産はほとんど間違いなく減少し始めたことが分かった。

・高い価格必ずしも生産量の増加にはつながらず。地質学が究極的な制限要因であり、地質学上の事実が他の事実を圧倒する。

・たとえ国家レベルでの緊急なエネルギー問題が生じても、州レベル、地域レベルでの反対や他の問題が起ることで従来型の対策行動は著しく遅れたり止められたりする。
−−−
石油の場合は天然ガスとは違うだろう、と業界の予測に信頼しきってしまうことがどうして出来るだろう、と結論づけています。
 最近の動向を知りませんが、LNG価格の高騰は米国での天然ガスピーク問題発ということもありえそうです。

閑話休題:ずいぶんな昔話をさせてもらえば、僕は以前にこの情報に接していたのでした。
僕が大阪の某エアコンメーカー&フロンガスメーカー(って書くとどこだかバレバレですが)に勤めていた新米社員の頃、実際にはCryogenic Refrigeratorの研究開発に関わっていたのでしたが、その背景にあったのが、極低温の冷媒として必須のヘリウムガスの枯渇予想でした。

そのヘリウム資源は、実はほぼ米国の天然ガス田からの副産物として、不純物を分離精製した中からヘリウムを取り出していたのに、そこのヘリウムに富んだ天然ガス資源自体を近い将来に使い切りそうだという枯渇の問題がありました。
ヘリウムの枯渇とも一対一でつながるので米国政府はヘリウムガスの戦略的備蓄をあれこれ考えている、といった類の論文を、僕は関連学会の論文のバックナンバーから引っ張りだして、会社の図書室で慣れない英語と格闘していたのでした。

(ちなみに、
ヘリウムガスというのは、極低温のたとえば超電導磁石の冷却などに不可欠なガスでしたが、過去の実験的な施設では、おおむね大型の冷凍施設で液化した液体ヘリウムを断熱したタンクで施設まで運び機械に注入して、その液体ヘリウムが蒸発する際の潜熱と大気中に放出されるまでの顕熱で機械を冷やすという、毎回使いきりの冷却システムでした。
もっとも、常温まで暖められて大気中に出てきたヘリウムガスは、大きな黒いゴム風船で貯めて、再利用するといういじましい節約が行われていました。
この労働集約的な作業に加え、液体ヘリウムの価格も高くて実用的にならない、これでは超電導磁石を使った機械自体が広く使われるようにならない、という問題を小型の極低温冷凍機で解決しよう、それでヘリウムガスの枯渇問題も防げる、というのが開発の狙いでした。)


世間にはほとんど知られていないんだけれども、各分野で資源の枯渇問題が潜在的な問題として取上げられており、それぞれの分野でその問題と格闘しているのだろうな、と思う次第です。
そういうマイナーな事例というのも集めてみると、ピークオイル問題への教訓として使えるものが見つかるかも知れないと思いました。

てなところで本題の中身はまた後日。

後日記:
ヘリウム資源問題(その2)
ずいぶん旧い記事ですが、1983年のものがありました。

●コメントby SGW 2006-11-23 10:35:27
「米感謝祭でヘリウム不足、パレードに影」
http://www.asahi.com/international/update/1123/004.html?ref=rss
という記事が朝日に載っていました。
おんや〜?

●コメントby 山頂2号   2006-11-28 10:25:08
peak, heliumとグーグルといっちゃん上に出てくるのが定期的に読んでるmobjectivistです。

http://mobjectivist.blogspot.com/2004/06/sniffing-for-peak-helium.html

2004年の記事ですが,その中で,彼も95年当時の記事を取り上げています。

今回のヘリウム不足も「製錬施設の不足」なんて,一時的なものですよって,どこかで聞いたような言い訳が使われています。天然ガスのピークとの関連が認識されるようになるのはいつのことでしょうね。

●コメントby 山頂2号 2006-11-29 16:37:38
ちょうど,オイルドラムに天然ガスについて、記事がでてました。LNGについての考察です。日本は1990年に世界の66%を輸入していたのが,2002年には48%に下がってます。しかし、日本、韓国,台湾で世界の7割近くを輸入。
http://www.theoildrum.com/story/2006/11/12/131115/83

●コメントby SGW 2006-12-01 22:44:46
 ritaさんどうもです。
ブッシュファイヤーの具合はいかがですか。

 長距離の輸送の比率が増えることでLNGに転換して、という国々が増えていくのは当然のことでしょうね。

 天然ガスは-196℃まで冷却しないとLNGになりませんし、どんなにちゃんとした断熱をしても常温の外気からの熱侵入があるため、ガスの損失が大きく、冷熱を消費地近くのLNG基地では回収することでエネルギー節約を目指していますが、それでも根本的に使いづらいガスであるといえます。
専用のタンカーを必要な速度で竣工できるのかどうか、も一つのスループットの限界となることでしょう。

 この天然ガス長距離輸送に関して技術的なブレイクスルーがもしあるとすれば、メタン水和物つまりメタンハイドレートを人為的に作ってやって、高圧/ある程度に冷却したタンカーで輸送することが想定されます。
しかしまあそれを膨大な規模でやるとなると、水をアラブの土地で得るのに費用やエネルギーが掛かるとかの話も出てくるでしょう。
 全然別の話ですが、一旦一つのガス田が減耗し始めると、その低下率は石油の場合よりも急峻であることが知られていますから、せっかく作った設備も短期間に過剰設備になるというリスクも出てきます。

 余りにも大量に使いすぎている石油の代替システムへの転換を計画しつくすということは元々無理な話でしょうから、この適応プロセスそのものがさまざまな摩擦を生むコストであるというのが実際のところでしょう。
posted by おぐおぐ at 13:11 | TrackBack(0) | 哲学(時代認識/エネルギー論) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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