2006年06月26日

ピーク緩和策の経済への影響−ハーシュレポート2 by『南十字星通信』

ritaさんから待望の記事の続編をいただきました。2つの項目に分割して紹介します。

ちょうど来日するというハーシュ氏の報告書第2弾は、対策編各論についてのハーシュのクサビの一つずつについての詳細なフィージビリティ・スタディとなっているようです。
総動員体制−言葉としてはむしろ二正面作戦とか多正面作戦?でしょうが−これは効率的ではないとしても総量の最大化を図るという観点で行っているものでしょう。
ただ本当のことを言えば多正面作戦にはなっていなくて、手をつけていない対策(省エネ側の対策なり、バイオ燃料なり)の種類の方が多いわけですからその対象技術の不選定理由こそを見ておく必要があるでしょう。
続編(要約はhttp://misi-net.com/publications/economicimpactsexecsummary.pdf )はまだ読んでいませんので、各論としてバイオ燃料はEPRが低いという理由で削除しているのかもしれません…。

例えれば魚釣りでどんなエサを使うべきかという比喩が成り立ちそうですね。エビで鯛を釣れればいいけど、エビのエサをかっさらわれれば損害は大きいでしょうし、ミミズで小魚を釣るのが良いのか、大物狙いをするのか、まき餌は意味があるのか…。
こういう疑問も湧いてくるので、選定した対象技術そのものは常に書き手のイデオロギーの反映となっているだろうことに注意して読む必要がありそうです。温暖化のことも気にしていないだろうし。

以下転載しておきます。
   −−−   −−−

去年2月、アメリカではエネルギー省の要請でまとめられた報告書、「Peaking of World Oil Production: Impacts, Mitigation and Risk Management(世界的な石油生産ピークについて: その衝撃、緩和、そしてリスク管理について)」が発表されました。「世界はオイル・ピークを迎えつつある」と結論する報告書はMISI社とSAIC社のベズデック、ウェンドリング、ハーシュの3人がまとめた報告書ですが、通称、ハーシュ報告書と呼ばれています。

さて、この3人の手によるいわば、ハーシュ報告第2弾が先頃、発表されました。「Economic Impacts of Liquid Fuel Mitigation Options (ピーク緩和策の経済への影響)」と呼ばれる報告書は、エネルギー省の国立エネルギーテクノロジー研究所(The National Energy Technology Laboratory)の要請で行われたもの。

米議会ではロスコー・バートレット議員などの「ピーク議員連盟」が、ピークの影響を緩和するため、「アポロ計画やマンハッタン計画に匹敵する総動員体制」を呼び掛けていますが、今回の報告書は、アメリカには何ができるのか、アメリカが全力を挙げて取り組んだ時、どれだけピークの影響を緩和できるのか、それを研究したものです。

(報告書からの抜粋)「世界では発見する以上の石油を消費しており、今から10年、もしくは20年以内のどこかの時点で、在来型石油の世界生産はたぶんピークに達するだろう。ピークに達することもそうだが、アメリカが石油輸入にますます依存することについて、エネルギー安全保障と国際収支の見地から広範な心配がある。

この報告では、アメリカが輸入される石油に大きく依存することをさけるため、物理的に実行可能な4つのオプションを検討する。

*車両の燃費を高める(VFE)
*石炭液化(CTL)
*油母頁岩(オイルシェール)
 *増進回収法(EOR)
(註:日本語では強制回収法,強化採収法などとも呼ばれるそうです。参照http://oilresearch.jogmec.go.jp/glossary/framesete_c.html )

報告書の目的は、ピークの影響を緩和するプログラムを分かりやすく説明することで、例えば、かなりな量の液体燃料を節約し、作り出すためにはどのくらい時間がかかるのか、関連した経費はどのくらいになり、経済や金融、雇用への影響はどうなるのか、といったことを説明することだ。
私たちは、全てのオプションに同時に手をつけるという総動員体制を想定した。こうすれば、最良の状況で、最善を尽くした場合にはどうなるのか、その上限が分かるからだ。

この報告は、2005年に同じ筆者たちの手でなされた世界オイルピークに関する報告書を発展させたものだ。新しい報告書では、特にアメリカにおいて、具体的に採れる緩和策を検討している。検討されるオプションはふたつの報告で共通している。私たちの分析によれば、報告書で取り上げるような緩和策を導入すれば、アメリカはかなりな量の液体燃料の節減と生産をすることができます。しかし、緩和策の効果が出てくるには数十年が必要であり、そして、費用は何兆ドルの規模になる。下記は、大規模な総動員体制で取り組んだ時、20年後にはどんな累積効果があるのか、その予想である。

 *節減されたり生産される液体燃料は440億バレル
*必要になる投資は2兆6000億ドル以上
*1000万以上の雇用機会の創設
*総工業売上は3兆ドル以上
*1250億ドル以上の産業利益
*連邦政府には5000億ドル以上の税収
 *州政府と地方自治体への税収はほぼ3000億ドル」


ふたつの報告書の著者のひとりでManagement Information Services Incの社長、ロジャー・ベズデック(Roger Bezdek)がGlobal Public Mediaのジェイソン・ブレノのインタビューに応えています。
全文は
http://www.globalpublicmedia.com/interviews/713

(部分訳)
JB-第2の報告書の目的は何でしょうか。それが必要とされたのはどんな理由でしょう。

RB-私たちが去年作成した最初の報告書は、オイル・ピークの意味と、その影響を緩和するために必要になるオプションについて、世界的な検討を行い、影響を考えました。今度の報告では、基本的に視点をアメリカに集中し、オプションについて子細な検討を行い、産業への影響はどうなるのか、雇用はどうなるのか、GDPヘの影響、職業や必要とされる技術などについて細かな検討を行いました。第2の報告書は、経費と利益について、ずっと詳細な分析だと言うことができます。

JB-この報告書が要請された背景は何でしょうか。この報告書はどこの要請で作られたものであり、それが要請されたのはなぜでしょう。
RB-世界的な状況についての報告書を完成させたあと、私たちの中に当然な疑問が浮かんできました。ピークはアメリカにとってはどんな影響があるのだろうか。緩和策にかかる経費、それからの利益は何なのだろうか。アメリカでは何ができるのだろう。私たちはエネルギー省の国立エネルギーテクノロジー研究所(The National Energy Technology Laboratory)のいろいろな人と話をしました。第2の報告書が有益であり、必要であることは、みんなの一致するところでした。

JB-これは主として液体燃料の問題なのでしょうか、それとも電気と暖房の問題であり、基本的にはエネルギー危機なのでしょうか。

RB-短期的にはエネルギー危機というより、むしろ液体燃料の問題だと思います。私たちが短期的な液体燃料の問題にどう取り組むか、それが、長期的なエネルギー問題解決の方向を決定します。しかし、少なくともこれからの10年から20年にかけ、主要な問題は液体燃料の需要が供給を上回ることです。もちろん、石油価格は非常に速い速度で上昇しており、もっとも気になるのは、価格がどんどん不安定になっていることです。ですから、液体燃料問題が、現在直面し、これから少なくとも10年から20年のあいだ、直面する深刻な問題です。

(部分訳終わり)


なお、ふたつの報告書の著者のひとりであり、今年2月からはマット・シモンズ、アルバート・バートレット(この人の講議ビデオは説得力があります)らに加わり、ASPO-USA(オイルピーク研究学会-アメリカ)の顧問に就任、アメリカにおけるピーク問題の先頭に立つロバート・ハーシュが8月に来日するそうです。
(来日詳細:http://www.jie.or.jp/15taikai.htm )
   −−−   −−−
Sent by rita at 06/06/23 16:36
南十字星通信 より転載)


●コメントby rita 2006-06-26 17:28:02
おっしゃる通り、何を「代替」として選択するか、そこが大きいですよね。

バイオ燃料は「液体燃料の生産」に含まれているような気がします。
あと、「省エネ」、これがすごく大切なんですが、それは「液体燃料の節約」に含まれるんじゃないかなと。
いう気がします。

●コメントby SGW 2006-06-27 09:21:33
ritaさんどうも。
インタビューを読んでみると、温暖化の話も長期的な問題としては検討しているようですね。そこで大規模発電所の排気からCO2を分離してEORで減耗油田にぶち込むのに使われるというのが緊急プログラムのEORのストーリーだとすると、せっかくなんだから炭素クレジットも付けたくなって・・・まあ面白い副産物ではあります。

●コメントby mattmicky 2006-06-28 23:23:38
SGWさん、リンクしてもよろしいでしょうか。

●コメントby SGW 2006-06-29 00:07:22
mattmickyさん、相互リンクをさせていただきます。
ここのトップページの左側の「リンク集:関係者のHP」にリンク先2つを付けておきます。

●コメントby SGW 2006-07-18 06:30:19
ニューヨークタイムズでもこの報告書の内容を取上げたようです。
Study Cites Plan to End US Oil Imports
http://www.climateark.org/articles/reader.asp?linkid=58347
posted by おぐおぐ at 06:50 | TrackBack(1) | 供給側対策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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