2006年08月26日

【本の紹介】有機農業が国を変えた

【コメント】
”キューバの有機農業について理解を深めていく中で、常に筆者の脳裏に浮かんでいたのは、日本と似ているということだ。どちらも米が主食で、水田を持つ。モンスーンとハリケーンという違いこそあれ(ないない)、多雨のもとで同じように雑草と病虫害に悩まされる。自給率も、有機農業へ転換するまでは日本とあまり変わらなかった。”(あとがきより)

 著者が1999年から継続して出かけていった「キューバ有機農業視察団」や取材を通じて得たキューバの有機農業の全体像をかっちり文章にした一冊です。
 1991年の旧ソ連崩壊後の油断・経済封鎖状態(スペシャル・ピリオド)を耐え抜いて10年足らずの間に有機農業による自給国として驚くべき大転換を達成したキューバの農業全般についての解説書となっています。

 ピークオイル論者の間でもこのキューバの経済危機を耐え抜いた事例はソフトランディングの成功例として高く評価されているそうですので、どのような転換が行われたかの全体像を一冊で知るためにはこの本はお勧めです。

「サトウキビ農地以外の農地の8割が有機農業や環境保全型農業で営まれており、経済危機までは130万トン輸入されていた化学肥料はいまでは約16万トン輸入されているだけ」

「日本の場合、1haあたりの化学肥料使用量は1158kg、農薬使用量は1haあたり71.4kgだ。これに対してキューバの場合、化学肥料は48kg、農薬については輸入量で計算すると2.45kgである。」

といった状況を聞くと勇気のようなものも沸いてきます、日本の場合は人口密度などからしても自給は無理でしょうが…。


有機農業が国を変えた―小さなキューバの大きな実験
出版社/メーカー:コモンズ
価格:¥ 2,310
ISBN/ASIN:4906640540
Rating:★★★★
【タイトル】有機農業が国を変えた
【サ  ブ】小さなキューバの大きな実験
【シリーズ】 
【著  者】吉田太郎
【発  行】コモンズ
【発行年月】2002年8月10日 
【ページ数】251
【判  型】
【定  価】2200円+税
【ISBN】ISBN4-906640-54-0
【種  別】学術
【分  野】有機農業
【検索キー】キューバ、有機農業、ミミズ堆肥、牛耕、バイオ農薬、都市農業、
【目  次】 
プロローグ 知られざる有機農業大国
第1章 経済危機と奇跡の回復
 1 カリブから吹く有機農業運動の新しい風
 2 食糧危機からの回復を支えた人びと
第2章 有機農業への転換
 1 キューバの土づくり
 2 病虫害・雑草との闘い
 3 循環型畜産への挑戦
 4 広まる小規模有機稲作運動
 5 化学水耕栽培から有機野菜へ
 6 有機認証をめざす輸出作物
第3章 自給の国づくり
 1 有機農業を支えた土地政策と流通価格政策
 2 大規模農場の解体と新しい協同農場の誕生
 3 広がる都市農業
 4 新規就農者と個人農家の育成
 5 流通の大胆な改革
第4章 有機農業のルーツを求めて
 1 経済危機で花開いた有機農業研究
 2 有機農業に長く取り組んできた農民たち
 3 有機農業のモデルプロジェクト
 4 有機農業と持続可能農業
第5章 有機農業を成功させた食農教育
 1 汗の価値を忘れない人間教育
 2 市民たちの野菜食普及運動
 3 実践的で開かれた大学教育
エピローグ 日本とキューバの有機農業交流を
あとがき

●コメントby forever2xxx 2006-08-26 22:49:51
これはこれは希望の光が多少差すような本(内容)のようですね。
是非読んでみたいと思います。
・小規模有機稲作運動
・都市農業
なんてのは特に興味深いです。

●コメントby SGW 2006-08-27 07:49:53
 吉田太郎氏の本ではあと2冊キューバ関係の本があります。
ちゃんと読んでいないのですがそちらでも良いようです。

「200万都市が有機野菜で自給できるわけ―都市農業大国キューバ・リポート」
「1000万人が反グローバリズムで自給・自立できるわけ―スローライフ大国キューバ・リポート」

●コメントby rita 2006-08-27 09:12:33
カストロの「一党独裁」が危機のときには有効だったこと,そして島国であることなど特殊な要素があり、キューバの例がすぐどこでも取り入れられるわけではありませんが,指導者がちゃんとしていればできるんだ(似たような状況だった金の北朝鮮と比較),そういう事例ですね。
エーゴ圏ではピークの視点からみたキューバもの,下記のdvdが出回っており、あちこちで上映会が開かれています。
The Power of Community: How Cuba Survived Peak Oil

●コメントby SGW 2006-08-27 19:27:44
 そりゃまあ、カストロの「一党独裁」がもともと支持を受けていなかったのならソ連崩壊後の経済危機ですぐに政権が転覆してアメリカの子分の政権に変わっていたでしょうから、もともと良い政治を敷いていたということはいえるでしょう。
それでも89年以前の農政は他の旧共産圏諸国との分業に基づいた近代農業(緑の革命)路線だったことから180度の大転換で有機農業へキューバがうまく進めたというのは驚きです。

 そうそう、著者の吉田太郎氏は当時は東京都の職員でしたが、最近知事選で負けた田中康夫知事にヘッドハンティングされて長野県職員になっていたとか。これからどうするんでしょうね。

●コメントby rita 2006-08-29 09:55:16
「独裁」と言うと,負のイメージがつきまとうのですが,緊急事態においては有効な場合もある。しかし「独裁」なら何でもうまく行くというものではないことは金ちゃんの例が証明しています。
キューバが「近代農業」から有機へ転換したのも、ない袖(石油ベースの化学肥料)はふれない,あるものを利用するしかない、という部分が大きかったような気がします。

いずれにしても,やる気になりゃできる,そういう意味では勇気づけられます。

●コメントby SGW 2006-08-29 17:45:13
ritaさん。
合意形成という観点ですね。
確かに「果たして温暖化対策でどれだけ削減しなければならないのか」という問いでは100年経っても合意できないおそれがありますが、「経済封鎖でない袖は振れない」ということなら状況認識は数日で出来上がるということで、違いは大きいですよね。

●コメントby SGW 2006-09-21 02:35:14
ML上で吉田太郎氏本人から、HPがあることを紹介いただきました。
キューバの有機農業
http://www14.plala.or.jp/Cuba/
 なんとピークオイル問題のビデオについてなどの翻訳もされていますね。
必見です。

●コメントby rita 2006-09-22 21:09:29
キューバ関係では
"The Power of Community ? How Cuba Survived Peak Oil"というビデオがあります。
http://www.communitysolution.org/cuba.html

技術的にはかなり安っぽい作りではありますが,やる気にさせてくれる作品です。
posted by おぐおぐ at 16:03 | TrackBack(1) | 需要側対策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック

キューバのソフトパワー
Excerpt:  前のエントリーの続きです。今月開かれた非同盟運動首脳会議の成果はいくつもありますが、インドのシン首相とパキスタンのムシャラフ大統領がキューバの仲介で会談し、和平プロセス再開の合意に達したなんていうの..
Weblog: 代替案
Tracked: 2006-09-26 14:05
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。