2006年11月16日

救命ボートを作る戦略について その1

リチャード・ハインバーグの「パワーダウン」という本 (2006-07-09)
http://www.janjanblog.jp/user/stopglobalwarming/forum2/3074.html
の続きです。

 リチャード・ハインバーグの「Powerdown」第5章(救命ボートを作る戦略)の出だしから引用しておきます。


−−−
Last One Standing戦略の目的は、石油減耗時代の苦痛を弱者に押し付けることにある。
Powerdown計画とは、自主的に全地球的な崩壊を食い止めるための人口減少と資源消費の削減のための戦略を立てることである。
Magic Elixir戦略とは、問題が自然に解決することを期待して無視することである。

 これらの戦略のうちではパワーダウン戦略のみが長期的にみて有効な戦略である。
 しかしそれでも、どんな政治リーダーも、少なくともアメリカの政治家の中ではこのような不人気な政策を提案することは政治的な自殺に等しい。

 すでに示したように、おそらく産業社会の崩壊は避けられない。
さらに気のめいることはその崩壊が管理された形では起こらないということである。
 現在の世界の経済、政治そして軍事的な支持構造に責任を負う管理者は、現在の世界システムの文脈の中では充分に権力を握っているが、このシステムの崩壊を食い止めるための能力には決定的に欠けているのだろう。
というのは、その方向に向けて彼らが取ることができる行動はすべて、競争する他の権力者たちと比べた際の自らの権力基盤を掘り崩すことになるからである。
つまり、システムを保全するための行動をシステム自らが抑圧するのだ。

 まるで苦すぎる薬のようで、このことの意味を認識するには数分以上掛かる。今のところはひとまず崩壊を単なる仮説、可能性のあるものとみなしておこう。
 「それしか店で売ってないとき、私たちはどう反応すべきだろう?」と。
 最初に思いつくことは、おそらく個人や家族のサバイバルのためにどうしようか、ということだろう。どこへ行けばいいのか?何が必要になるだろう?どんな気候がよくて、どれだけの庭地がいるだろう?水はどうやって手に入れよう?銃や斧を蓄えるべきか?

 この方向ではやがて袋小路にはまり込むことは避けられない。
予測不可能な社会的なカオス状態の中で、個人的なサバイバルを計画することは難しい。自宅に庭があっても隣人が飢えていれば武器で土地を守るか、それとも作物がなくなるのを見送るしかない。だけど他人がたくさんの銃を持ってきたり、自分が眠っているときにやって来たらどうすればよいだろう?

 最終的には個人のサバイバルはコミュニティが残りうることに依っている。でもじゃあ隣のコミュニティが飢えて暴力が蔓延していたら自分のコミュニティは防衛しなければならなくなる。もしコミュニティが残存したとしても、(テレビやラジオ、新聞、出版社など)情報ネットワークや学校と図書館が消え、つまりは世界を理解し、時空を超えてコミュニケートできる文化的なインフラが消えてしまったなら私たちの人生はどうなるだろう。

 人類の文化的な生活は単なる生存にまで下降するだろうか。少なくとも産業革命前も人類は口承の文化の歴史を持ち、地域の共同体に根ざした関心事を記してきた。
産業の期間がこの伝統を壊してしまっているからには、崩壊後の人びとは、崩壊前の生活の記憶をわずかな支えにして、ほとんど伝統なしに生活を支えていかなければならず、文化のない生活のリスクを負うだろう。

 ということで産業文明が散らばり死んでいくにつれて、私たちはできるかぎりの断片、自然科学やら実用的な知識やら、音楽、芸術、哲学といった私たちを支えてくれるものを拾い集めることが必要になってくる。
 この章では深い穴を覗き込もう。崩壊はどんなふうに見えるだろう、誰が生き延びる機会を持つだろう、どうすれば最善の準備ができるだろう。

−−−

ということで、以下中国文明、ローマ文明、マヤ文明の崩壊についての考察と教訓の議論へと続いています。
 今日はここまで。

●コメントby forever2xxx 2006-11-22 21:28:12
SGWさん、日本語訳とご紹介ありがとうございます。

リチャードさんも ”崩壊を単なる仮説、可能性のあるものとみなしておこう”という前提なのですね。

ピークオイルの影響のシナリオを検討されている方とかはいらっしゃるのでしょうかね?
興味本位ですが、是非色々なシナリオを知りたいものです。

●コメントby SGW 2006-11-23 07:17:28
 おはようございます。
「すでに示したように、おそらく産業社会の崩壊は避けられない。」とあります。

 翻訳が下手ですいません。僕の理解では、
「ほんとはここで一旦本を閉じてじっくり何時間でもこのことの意味を考えて欲しい。そうすれば崩壊が不可避であることに得心がいくだろう。
けれども、ここでは本を先に進めるために、読者側の便宜として崩壊が単なる仮説であるものとしておこう。」という趣旨の文章だと思います。
つまり最後の保険として救命ボート戦略はぜひともやらないといけない、という前提の上で、さらに生存可能性を高めるためにはパワーダウン戦略もやらないといけない、という論理構成になっているのではないかと。

シナリオについて
 英語版では確かOil Shockwaveシナリオというのがあったんではないかと。
http://www.secureenergy.org/reports/oil_shock_report_master.pdf
取りまとめはなんと『今回ラムズフェルドに代わって米国防長官になった』ロバート・ゲイツ氏ですね。いやー、びっくり。

どんな人物かについては、こんな情報が流れています。
http://morley.air-nifty.com/movie/2006/11/emb__ba08.html
posted by おぐおぐ at 15:59 | TrackBack(0) | go! localアプローチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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