2006年12月20日

4つの戦略オプションと人びとの選択

リチャード・ハインバーグの「パワーダウン」という本 (2006-07-09)
救命ボートを作る戦略について その1(2006-11-16)
の続きです。

 パワーダウン本の最後の章「私たちの選択」の一部を紹介しておきます。

−−−−−
・エリートたちの選択

・運動体の選択

・私たち人びとの選択(The Choice of us folks)

 今日、世界中の大多数の人々は、エリートたちの視点と運動体の視点のどちらかに同調的である。なぜならそれらの見解がマスメディアに現れているから。
 もちろんエリートの視点の方が優越しているのは、彼らがメディアの中身の多くを管理しているからだ。

(A)
 特にアメリカにおいては、支配するエリート層に強い忠誠心を持っている人や、「愛国心」を深く心に抱く人(最近では同じことかもしれないが)、または現在の社会状況を維持することが得になる人たちは、現状を維持するために政府が資源へのアクセスを維持し、そのアクセスへの脅威となる外国を打ち負かすと約束する指導者に惹き付けられるが、このことは理解しやすい。
 この人たちとは、裕福な社会層、専門的な職に就き家族を持ち、歳を取った人たちであったり、テレビから世界観を得ているあらゆる階層の人たちである。 これらの人たちは反射的に「最後の勝者として生き残れ」戦略に引き寄せられる。エリートに従い、やがて彼らは思わぬ未来に入り込んでいることに気づくことになる。
「解放」のための戦いは、長く血塗られた軍事占領や終りのない「テロ」へと変わっていく。
責任者がすべて正しい事をやっていると主張しているのに経済がゆるんで?いく。

 出来事に意味を持たせるためには、敵意を持ったグループや個人が、エリートの作ったよく練られた情け深い計画の裏をかこうとしていると想定するしかない。
 だから私たちが知っている文明を守るためには、これらの邪悪な計画を根こそぎにするしかないのだ。そしてこれらの邪悪さには限りがないため、恐れを知らぬ私たちの指導者たちもまた、どんな戦術をも用いることが正当化される。
この偉大な聖戦を戦い抜くためには、私たち市民は人間性や理想の多くを犠牲にするのもやむをえない。

 エリートに従う人々は多くのものをあきらめなくてはならない。
 しかしこの人たちは、自分たちの分け前と、正しいという感覚を持ち続けることができる。(ふーっ。)

(B)
 一方、貧困層や、左翼の知識人、環境破壊の被害をもっとも受けやすい人たちといった、エリートの戦略に批判的になる訳のある人たちは、一般的にパワーダウン戦略に惹き付けられるだろう。とはいえ思いをめぐらすのは苦さを薄めたまがい物に過ぎないだろうが。

 このパワーダウン戦略を支持する人々は、両方向から落胆させられるだろう。世界がちりぢりになっていく中でもエリート層は方向転換を拒否するため、答えがあることを知りつつその答えがほとんど実行されないのを見守るしかない。
 いかにエリート層が不適切で自分勝手なことかと自己憐憫にふけり、やがて身近な貧困や環境破壊の現場に没頭していくだろう。
中でも過激な人びとは悪魔に取り付かれてエリートから迫害されるだろう。あるいは行動中に燃え尽き症候群に掛かってしまうだろう。

 しかし彼らは、理想主義を保ち、味わう価値のある勝利もいくつか手にすることができるだろう。

(C)
 また、どちらのグループの多数とも、マジックエリクシール(錬金術の薬)を待つ戦略によく惹きつけられるだろう。
だれでもソリューションが好きだ。簡単であればあるほど良い。機能しない解決策であっても、ある方が何もないよりはましだ。
とはいえ、技術や市場からの救いの手を待つ人たちは、待ちに待ち続けるだろう。

 解決策は明らかだ、どうして採用されないことがあるだろう。
何年か経つにつれて、水素エコノミーやカナダ産タールサンド、メタンハイドレートや熱分解に一体何が起こったんだろうと思うようになる。世界の状況が悪化するにつれて、エリートの間からや、運動体からスケープゴートを探すようになる。「きたない石油会社が、世界を救う新エネルギーを抑圧して、大気を汚し外交を操縦し続けているんだ」あるいは「呪われた環境保護派が原発を作らせようとせず国の決議?を弱めているんだ」と。

 安易な解決策を信じ続けられるようにするために、彼らは批判的思考の能力を封じ込める必要がある。

 しかし彼らは楽観主義を持ち続けることはできる。

(D)
 わずかな人たち、システムの縁にいて、あるいは外側からシステムを眺めることができる人たち、主要な影響グループとつながりのない人たち、オルタナ情報源を持ち批判的思考をできる人たちは、次第に現代文明のシステム全体が本質的に持続可能ではないという結論に達するだろう。
その内の大多数は世界が崩壊していくのをどうしようもなくシニカルに見守るだけだろう。
 このわずかなグループの中でもわずかな人たちだけが、実際に効果的な文化的救命ボートを建設するのに必要な手段を持つだろう。

 救命ボート建設戦略を採る者たちには特有の困難が待ち構えている。エリートたちは彼らをアウトサイダーであり潜在的な「テロリスト」と見なすだろう。運動体は彼らを利己的なサバイバリストと見なすだろう(それが当たっている場合もあるだろうが)。
救命ボート建設者たちは、地域共同体を粉々にするようなグローバリゼーションの敵意のある動きのさなかで、小規模で地域に根ざした持続可能な社会システムを作る努力をしなければならない。
かれらの支持者の基盤は脆弱で、シニシズムに陥る傾向と闘わなければならない。

 しかし彼らはリアリズムと創造性、自治/自律を持ち続けることができる。


 状況はこれほど単純明快に四分割できるわけではないだろう。多くの人は複数の方向に惹かれるだろう。
 現在の産業主義が持続不可能であることの証拠を目にしながらも、どんな形ででも文明を救えないものかとあとずさりをする。この人たちは救命ボート建設とパワーダウン戦略の組み合わせを模索することに惹かれるだろう、システムの内部での変革のために働きながら別のプランを作ることに。

 私自身は…(ここから先は原著を読んでのお楽しみということで。)
−−−−−
 
 最初の方の記述には明らかに、米国が行っているイラク戦争の現状が投影されています。
 リアリズムって一体なんだー。
論評は、ちょっとやりようがないと思います。ハインバーグのお師匠さま、と勝手に呼んでおきましょう。


●コメントby ぬり  2006-12-20 15:36:33
http://mixi.jp/view_community.pl?id=1322211
うーむ。考えさせられますね。

前著「THE PARTY'S OVER」は持っているんですが、こっちも買わなきゃ!

●コメントby SGW 2006-12-20 21:31:18
 ぬりさんこんにちは。
mixiのコミュニティ「ピークオイル」ではみんなのお相手をありがとうございます。

ちなみに、すごい読書家ですよね。僕が大学生だった頃には、英語の本なんて買った記憶がないです。

●コメントby ぬり  2006-12-20 23:02:24
こちらでのコメントは初めてでしたね!
mixiでの対応は、今はライフワークみたいなもんですw。大変お世話になってます。SGWさん(達)が参加するようになってから、随分とレベルが上がった気がします。感謝してます。

大学生・・・とはいっても、もう9年もいますからね・・・。石油関係の本を読み始めたのは今年の6月ぐらいですね。読書家じゃなくて買書家ですw。買うだけ・・・。

ネットサーフィンが苦手なんですよ。だから、書籍情報に頼る→情報が古め。

●コメントby forever2xxx 2006-12-21 05:48:41
翻訳有難う御座います。
>私自身は…
ハインバーグさんだけに気になる!
 どんなパワーダウンだろう。。。私も買おう・・

●コメントby SGW 2006-12-21 11:24:46
foreer2xxxさん、
 いや、この本の題名がPowerdownであり、次の本の題名がThe Oil Depletion Protocolであることから、ハインバーグ師匠が何を中心に据えているかは自明のことのように思いますが。

●コメントby forever2xxx 2006-12-23 07:35:46
ASPOのこちら↓のプレゼンの記載や、
http://www.aspoitalia.net/images/stories/aspo5presentations/Heinberg_ASPO5.pps
ホルムグレンと色々やっているので、

>私自身は・・
ときたら ”パーマカルチャーをやります。具体的には・・・”
なんて、私個人の思惑的な事が書いてあるのかな〜 なんて思っちゃいまして・・。

●コメントby SGW 2006-12-23 14:26:31
 救命ボートの必要性を認めていますし、ハインバーグ師匠は元々カリフォルニアでそういうことをやっていた人なんじゃないんでしょうか。よく知りませんが。
posted by おぐおぐ at 06:33 | TrackBack(0) | 哲学(時代認識/エネルギー論) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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