2007年09月05日

本の紹介『石油エネルギー資源の行方と日本の選択』

 石井彰氏の本を買おうと思って本屋を回っていたらそちらは売り切れで、代わりにこちらを購入しました。
石油エネルギー資源の行方と日本の選択(著)武石 礼司,柴田 明夫,須藤 繁,茂木 源人
石油エネルギー資源の行方と日本の選択
出版社/メーカー:幸書房
価格:¥ 1,995
ISBN/ASIN:4782103050
Rating:ZERO

この本は編者も含めた石油関連の研究者4名が各章を分担して独立した論文を集めた形となっています。石油業界に関わるおのおのの立場から、ピークオイル問題についての評論をしている形になっています。
ちょっと読んでみただけですが、読み応えがありそうです。

以下、抜粋と感想を。”第1章の柴田論文では、エネルギー市場の動向を検討する。”
”原油に代表される近年の資源価格の高騰は一過性のものではなく、「安い資源時代」から「高い資源時代」への「均衡点が変化した」と見る。”
”第2章の須藤論文は、「21世紀初頭の石油産業の動向」と題して、OPEC、南米および上海協力機構の活動状況、ガス版OPECに向けた動き、さらにロシア、中国、米国の動向について述べている。”
”第3章の茂木論文は、石油生産の推移予測を行っており、資源量の枯渇が持つ意味が経済的な側面と、物理的な側面の両面を持つことを説明する。ついで、説得力のある世界石油生産量の推移予測を行うため、ピークオイルおよびその後の石油生産減退の予測として、石油資源政策のみならず、代替エネルギー、省エネルギー技術への投資戦略も含めた包括的で長期的なエネルギー戦略の立案に役立てるための分析を実施している。”
”第4章の武石論文は、第1章から第3章までの分析結果に基づき、日本のエネルギー政策および石油政策のあるべき方向につき検討を行っている。”

ということで、
柴田明夫氏は丸紅経済研究所、須藤繁氏は国際開発センター、
茂木源人氏は東大大学院准教授、武石礼司氏は富士通総研経済研究所の肩書きです。

 柴田氏は一節を割いて、「現実化するピークオイル問題」と題して解説しています。

 須藤氏はピークオイル論に否定的で、”基本的にダニエル・ヤーギン氏の考え方に賛同”としていますが、ピークオイル論の中でマシューシモンズの本についてだけは触れていません。

 茂木氏はハバート曲線の適用ではなく、学術的な油田のべき乗分布や将来の発見確率の関数などに基づく推計を一章を使って解説しています。
 が、その結果最終的に示しているのは、R/P=25年を切った時点で指数関数的に減少させはじめる、いわば枯渇対応のターニングポイントをピークとして、そのピークまでは需要に応じて生産も右肩上がりに上げ続けられるという、いわばとんがり帽子型の、EIAがかつて示した生産量曲線をベースシナリオとして導き出しています。(後日記:最上部のグラフは2004年の米国エネルギー情報局EIAの論文より。そもそもこのような持続可能でない未来のグラフを提案するのは可笑しいと言わざるを得ません。)
 つまりそして後期ピーク説(但しこの曲線では、ターニングポイントではハバート型のピークの場合よりもはるかにギャップが激烈に広がるのですが)の場合にもOPEC諸国の戦略によって政治的なスループットの限界が生まれ早期にピークになるが、その方が望ましいという問題提起補強をしています。
もちろん、統計はUSGSやBPのデータを使っているわけですから、後期ピーク説そのものをもっともらしく再確認しました、というものだと言うことができます。
(仮にこのモデルでもR/P=40年をターニングポイントにしてもらえば、石油減耗議定書で求めている削減提案と同じになるわけですが、どうしてそういう価値判断をしないのか、については書かれていません。)

 武石氏の論も基本的な路線は同じでしょう。日本のエネルギー需要を温暖化への対応も含めて書いてはいるのですが、2030年のピークに向けて、バックキャストでやるべきことを考えなきゃ、という話でまとめているところが新しいかと思います。

 気になった箇所はこちら。
”世界の石油の需給状況の将来を考えた場合に、2030年頃には、在来型の原油の生産量は、OPECを除いては、ほとんどの国で生産可能な埋蔵量のピークを達成したあととなっていると予測され、生産量は減退に向かっている国が多くなっていると見られる。”
という箇所です。
 この2030年という予想は2010年くらいじゃないんでしょうか。
現在でも非OPEC諸国の半分くらいは下がってはいませんか。

 ざっと読んでみた結論としては、本全体として、後期ピークオイル説を知る上では良いまとめとなっているかと思います。
が、早期ピーク説を批判するのならまずはOPECの埋蔵量水増しの主張についてちゃんとフォローしていないと話にはなりませんし、石油の減耗あるいはEPRの悪化によって次第に需要の指数関数的な増加について行けなくなる、というのがハバートの曲線の論理には入っているはずです。

早期ピークオイル説の懸念に答える本にはなっていないようです。
posted by おぐおぐ at 01:22 | TrackBack(0) | 悪影響/ニュース/リンク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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