2008年11月14日

IEAの公式発表では…

「IEAによる年率9%の石油減耗評価の意味」
http://sgw2.seesaa.net/article/127917473.html
の続きです。


11月12日にHPに掲載された、国際エネルギー機関(IEA)のWEO2008のエグゼクティブサマリーは、日本語版も出ていますね。

http://www.worldenergyoutlook.org/docs/weo2008/WEO2008_es_japanese.pdf

日本人の田中事務局長のお陰でしょうか。

 そのままご覧ください、というと不親切でしょうから長々と関連部分をピックアップしてみます。

”2008年の価格急騰へと行き着いた近年の価格上昇は、短期的な価格ボラティリティの大幅な高まりと相まって、価格が短期的な市場の不均衡にいかに敏感に反応するかを浮き彫りにした。また、石油(及び天然ガス)資源が究極的には有限であるということへの人々の注意も喚起した。”
(コメント:確かにピークオイル不安のことを指摘しているここの記述は良いですね。でも、石炭についての記述も同じであるべきですが)

”実際には、供給面での差し迫ったリスクはグローバル資源が不足するリスクではなく、必要な投資が不足するリスクである。上流部門での投資は名目ベースでは急増しているが、増加の大部分はコストの上昇と生産減退率の上昇−特にOPEC以外のより高コストの地域における−に対処する必要によるものである。
現在、最も安価な資源への国際石油メジャーのアクセスが制限されていることなどにより、大半の資金はコストの高い埋蔵資源の探索と開発に向かっている。世界の大半の地域における資源の減少とあらゆる地域における生産減退率の加速に直面する中、最もコストの安い国々での生産を拡大することが、合理的なコストで世界の需要を満たしていく上で極めて重要となる。”

 ”世界の石油生産量が予測どおりに増加するかどうかは、十分な投資がタイムリーに行われるかどうかにかかわっている。日量約6400万バレルの追加的な総生産能力−サウジアラビアの今日の生産能力の約6倍−が2007〜2030年に操業を開始する必要がある。新規能力のうち日量約3000万バレルは2015年までに操業開始の必要がある。この期間に投資不足により石油供給がひっ迫する現実的なリスクは解消されていない。”
(コメント:ということでやはりOPECにあるはずの公表埋蔵量をいかに吐き出させるかが問題なのだ、という問題意識です。ほーんとにあるのかえ?という疑問をクリアする根拠があるわけではないようです。)


”しかし、油田ごとの石油生産量の減退が加速している

 世界には十分過ぎるほどの石油資源が眠っているが、その資源がレファレンス・シナリオで予測されている需要水準を満たせるほど迅速に開発される保証はない。最大の不透明材料のひとつは、既存の油田の生産量が成熟に伴いどのくらいのペースで減少していくかである。これは、予測される需要を満たすために世界的に必要とされる新規能力と投資を決める上で、極めて重要な要因である。
 WEO2008のパートBで述べられている、800油田の過去の生産トレンドを油田ごとに詳細に分析した結果によれば、観察された減退率(観察可能な生産減少)は世界の全ての主要地域で長期的に加速する可能性が強い。これは、油田の平均規模の小型化と一部の地域における海底油田から見込まれる生産量のシェア拡大によるものである。我々の分析によれば、一般に、油田の埋蔵量が多ければ多いほど、埋蔵量に比したピークは低く、ピーク後の減退も緩やかである。また、減退率は海底(特に深海)油田より陸上油田の方が低い。投資政策や生産政策も減退率に影響する。
我々の推計によれば、生産のピークを過ぎている油田の場合、世界全体の観察された減退率(生産量加重ベース)は現在6.7%である。レファレンス・シナリオでは、この減退率は2030年に8.6%へと上昇する。現在の数字は、稼働中の54の超巨大油田(埋蔵量50億バレル超)の全てを含む800油田の生産分析から導き出したものである。このサンプルの場合、全稼働期間の生産量で加重した全油田平均のピーク後の観察された減退率は5.1%であった。減退率が最も低いのは大規模油田で、平均すると、超巨大油田は3.4%、巨大油田は6.5%、大油田は10.4%である。”
(コメント:既存の油田についての減退率が明示されるのは珍しいことで、特筆すべきことでしょう。)

”観察された減退率は地域により大きく異なる。
最も低いのは中東、最も高いのは北海である。これは主に油田の平均規模の差を反映したものであるが、平均規模は全体の埋蔵量がどの程度枯渇しているか、陸上油田か海底油田かといった点と関係している。推計による世界の減退率が我々のデータに基づく減退率より高いのは、小規模油田の相対的に高い減退率を調整した結果である。
自然減退率(基調となる減退率)は観察された減退率より平均で約3分の1高いが、この差は投資額の違いを反映して地域ごとに異なる(自然減退率は進行中および定期的な投資の影響を除いたもの)。推計では、ピーク後の油田の自然減退率は世界全体で9%である。言い換えれば、既存油田の生産減少ペースは、ピークを過ぎた後にこれらの油田に設備投資が全く行われていなかったとすれば、約3分の1速くなっていた、ということである。レファレンス・シナリオの予測は、全ての地域で油田の平均規模が小型化するとともに、大半の地域で予測期間にわたり海底油田への生産シフトが起きることから、世界の平均自然減退率が2030年までに年率で約10.5%(観察された減退率より約2%ポイント高い)へと上昇することを意味している。これは、この減退率の上昇を相殺するという目的だけのためにも、一部の国では上流部門への総投資額を増加させる必要があり、しかも場合によっては大幅な増加が必要となる、ということである。この影響は広範囲に及ぶ。予測される自然減退率の加速を相殺するだけのためにも、日量100万バレルの追加能力――現在のアルジェリアの総能力に匹敵する量――への投資が予測期間末まで毎年必要になる。”
(コメント:ということで石油メジャーの手の届くところにはないOPECの埋蔵量頼みである、というところまでを明らかにするのがIEAの限界である、という立場のようでした。仮にOPECの公表埋蔵量が水増しであったことが後日分かったとして、投入した投資がむだになることにはIEAは責任を負わない、ということになります。)

”上流部門への投資障壁が世界の石油供給量を制約する可能性がある

 自然減退率が上昇するということは、既存油田(自然減を食い止めるため)でも新規油田(既存油田の生産減少を相殺するためと需要の増加に応えるため)でも上流部門への投資を増やす必要がある、ということである。実際、上流部門への総投資額(石油・ガス田)は近年急増しており、2000〜2007年に名目で3,900億ドルへと3倍超に増えている。この増加の大半は単位コストの上昇に応えるためであった。コストの上昇について調整すると、2007年の投資額は2000年に比べ70%の増加である。IEA上流投資コスト指数によれば、世界全体の上流コストは推計で2000〜2007年に平均90%上昇し、2008年前半にさらに5%上昇した。この上昇の大半は2004〜2007年に生じている。
WEO2008のために調査した世界の上位50社(世界の石油・ガス生産量の4分の3超を占める)の計画に基づくと、世界の石油・ガス向け上流総投資額は今後も増加し、2012年までには名目で6,000億ドルを超える。これは2007年に比べ50%超の増加である。想定どおりにコストが横ばいになれば、2012年までの5年間の実質投資額は年率9%増となる。これはその前の7年間とほぼ同じである。
 レファレンス・シナリオの予測は、石油・ガスの上流部門では2007〜2030年に累計で約8兆4,000億ドル(2007年ドルベース)、年平均で3,500億ドルの投資が必要になる、ということを意味する。これは現在の投資額を大幅に下回るが、投資が必要とされる地域が大きく変わるためである。投資額を大幅に増やす必要があるのは、豊かな資源を抱えている地域で単位コストが最も低い地域、特に中東向けである。要するに、資源基盤が縮小するにつれ、国際企業が非OPEC地域に投資する機会は減り、世界の石油・ガス残存埋蔵量を大量に抱える国々が、国有企業を通じて直接的に行うにしろ、外国投資家とのパートナーシップを通じて間接的に行うにしろ、より大きな投資負担を負わざるを得なくなる、ということである。これらの国々に、この投資を自ら行う、あるいは必要な投資ペースを保つために十分な額の外国資本を誘致するという意欲が当然にあるとは考えられない。”
(コメント:さて、蜜のあふれるカナンの土地があるのだ、そこではたいした額の投資も必要なく掘れば石油は出てくるのだが、OPEC諸国が政治的な思惑で投資をしようとしないので、国際石油メジャーはその外側の非OPEC各地の高価な開発をしながらも疲れているのだ、という結論です。なにやらオドシ・スカシ戦術に訴えたい、というきな臭い臭いすら感じますが、この後は国際オイルメジャーにOPEC諸国内で経営協力をさせてくれ、と続いています。)

全体の感想:
 一番上のグラフは、世界エネルギーアウトルック2008のHPの中にあるプレゼン用グラフ
http://www.worldenergyoutlook.org/key_graphs_08/WEO_2008_Key_Graphs.pdf
の内の一枚です。

 青い部分、既存の油田からの原油生産量の予測部分には、減耗率(9%なのか6.7%なのかは判別できませんが)の数字が刻み込まれていて、急な下り坂を示しています。投資の一部は、このカーブを緩やかにするためだけに使われており、観測された減耗率の状態の前提条件となっています。
 このグラフが従来公表のグラフと異なるのは、赤い部分のyet to be foundつまりこれから発見できるかどうか分からないものの規模を、yet to be developedとは区分けして明示しているところです。この赤い領域の石油が仮に発見量ゼロであれば、OPECの公表埋蔵量が正しくとも、2015年頃がピークオイルの年であることになります。そして仮にOPECの公表埋蔵量が水増しでyet to be developedが実際には残っていなければ(早期ピーク論)、あるいは仮に巨額の開発投資が適切に行われなければ(政治的ピーク論)いずれにしても今年が地球最後のピークの年であった、ということになるわけですね。

 早期ピーク論が正しいのか、政治的ピーク論が正しいのか、を考えるにあたっては、
 OPEC諸国は今年前半の原油高騰時に、なぜ石油開発に儲けを再投資しなかったのでしょう?
 脱石油の次の経済は金融セクターだといい、大規模な不動産投資をしていたり、国家投資会社を作って再びアメリカなどに投資資金を還流させていたのはなぜでしょう?
 との疑問への答えとして、OPEC内には有望な投資先がないからだという結論になるでしょう。

 さあーて、この2つのいずれであったとしても、世界金融危機の今年以降しばらくは巨額な開発投資が不可能になるでしょうから、結論としては今年が地球最後のピークの年であったということをIEAのこの報告書は保証してくれているものでしょう。リンク:
IEA: World's energy use is 'patently unsustainable'
http://news.cnet.com/8301-11128_3-10094825-54.html

Energy body warns on oil prices
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/7723576.stm

After the credit crunch, the oil crunch: watchdog warns over falling supplies
http://www.guardian.co.uk/business/2008/nov/12/oil-gas-companies-credit-crunch
posted by おぐおぐ at 09:18 | TrackBack(0) | 悪影響/ニュース/リンク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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